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クランクシャフトの構造・ペアリング交換方法・修理方法

更新日:2024年01月17日

クランクシャフトについて、その仕組みや構造、またベアリング交換や修理の方法などを解説します。ピストンの上下運動エネルギーを、回転エネルギーへと変換して、車を動かす駆動力を生み出すために不可欠な、エンジンの重要部品、クランクシャフトの耳寄りな情報を紹介します。

クランクシャフトの構造・ペアリング交換方法・修理方法

クランクシャフトの構造について

車やオートバイが好きな人なら、「愛車の整備は自分でやりたい」と考えている人は、きっと少なくないでしょう。車やオートバイはただ何気なく運転していてもとても楽しいですが、エンジンオイルやブレーキパッドの交換といったごく簡単な整備でも実際にやってみることで、愛車との距離がグッと近づいた感じがしてより一層愛着が湧いてきます。

オーナーをいつもワクワクさせてくれる愛車のメカニズムに直(じか)に触れ、その構造や仕組みを把握しながら日々のメンテナンスに励むことで、オーナーとしての楽しみが確実に増していきます。

ピストンエンジンには欠かせないクランクシャフト

車やオートバイを動かすのに絶対に必要なパーツとして「クランクシャフト」があります。クランクシャフトは、エンジンに関連する重要なパーツのひとつです。

クランクシャフトは、ピストンがシリンダー内を上下することでパワーを発揮する「レシプロエンジン」にとって、エンジンの燃焼によって行われる上下運動を、回転運動に変換し、車を走らせる駆動力を得るために無くてはならない部品です。

このようなクランクシャフトについて、その仕組みや構造、またベアリング交換や修理の方法などを解説していきます。

クランクとは?

クランクシャフトとは、ピストンによる上下運動を回転運動に変換し、車が走るための駆動力を得る部品です。

では、クランクシャフトの「クランク」とは一体何のことでしょうか。これは非常に単純で、自転車に乗る人なら誰もが知っています。そう、自転車を漕ぐときに使う「ペダル」です。

自転車には、左右でちょうど互い違いになったペダルが付いています。左右のペダルの根本はチェーンリングという大きな歯車の中心部に固定されていて、ペダルを足で踏み下ろすことで歯車を回転させ、その力をチェーンによって後輪についているスプロケットという小さい歯車に伝達し、自転車を走らせることができます。

この、左右の足でペダルを踏み下ろす「上下運動」を、チェーンリングの「回転運動」に変えるシステムを「クランク」といいます。自転車では、チェーンリングとペダルを組み合わせた部品を「クランク」と呼んでいます。

エンジンはピストンの上下運動で車を走らせる

車やオートバイのエンジンは、現在、そのほとんどが、ピストンによる上下運動のエネルギーで車を走らせる「レシプロエンジン(ピストンエンジン)」が搭載されています。

レシプロエンジンの仕組みについて、通常のガソリンエンジンの場合で説明すると、次のようになります。

レシプロエンジンの仕組み(4サイクルエンジン)

①まず、シリンダー内をピストンが下降する際の負圧によって、空気とガソリンを混ぜた「混合気(こんごうき)」を吸い込みます(吸気行程)。

②シリンダー内をピストンが上昇し、吸い込んだ空気をシリンダーヘッド(上部)の燃焼室へと圧縮します(圧縮行程)。

③圧縮された混合気を、点火プラグによって着火して燃焼(爆発)させ、その圧力でピストンが下降しエネルギーを発生します(膨張行程)。

④ピストンが再び上昇し、燃焼によって発生したガス(排気ガス)を排出します(排気行程)。

上下運動のエネルギーを回転エネルギーに変換

このように、エンジン(4サイクルエンジン)は、上記の4つの行程を繰り返してエネルギーを作ります。そして、この4行程のうち、ピストンが①吸気と②圧縮、③膨張と④排気の計2回、上下に往復しています。

クランクシャフトは、このピストンによって行われる上下運動のエネルギーを、回転エネルギーへと変換します。そのエネルギーがトランスミッションを通じて車輪へと伝えられ、車を走らせます。

ピストンとコンロッド

エンジンの仕組みを、自転車を漕ぐ人の脚に例えると、シリンダーの中で上下運動をするピストンは、自転車を漕ぐ際に左右の脚で交互に上下する「膝(ひざ)」に当ります。

人の場合は、膝を上下する(屈伸する)筋肉の力によって作り出したエネルギーを、膝から下の「脛(すね)と足」でペダルを踏み下ろすことでクランクへと伝え、回転エネルギーへと変換します。

エンジンもこれと同じで、ピストンの上下運動をクランクへと伝える、「脛から足」に当る部品があります。これを「コンロッド(連接棒:れんせつぼう)」と呼び、ピストンとクランクシャフトとをつなぎ、上下運動によるエネルギーを伝達します。

クランクシャフトの構造

ピストンによる上下運動のエネルギーを受け止めて、回転エネルギーへと変換するクランクシャフトは、大きく分けて3つのパーツで構成されています。

それは、ピストンとつながるコンロッドを接続する「クランクピン」、それを支える「クランクアーム」、そして、シリンダーブロックに支持され、クランクアームにより固定されて回転する軸の部分、「クランクジャーナル」です。

クランクピン

クランクピンは、ピストンによる上下運動のエネルギーを伝える、コンロッドを受け止める部品で、クランクアームによって左右から支えられています。

コンロッドによって伝えられたピストンの上下運動エネルギーを、クランクピンが受け止めることで、左右のクランクアームを回転させて軸(クランクジャーナル)を回すことで、回転エネルギーを生み出します。

この際、ピストンの動きに対してクランクが滑らかに回転するよう、クランクピンとコンロッドとをつなぐ「大端部(だいたんぶ)」と、クランクピンとの間には、「コンロッドベアリング」が組み込まれています。

クランクアーム

ピストンの上下運動を受け止めるクランクピンによって回転し、出力軸であるクランクジャーナルを回して、回転エネルギーを生み出す部品がクランクアームです。

クランクシャフトは、1分間に数千回転という高速で回転するため、ピストンごとに設けられたクランクが、それぞれバランスよく回転することが、大変重要です。そのため、クランクシャフトを回転させるクランクアームには、「バランスウエイト(カウンターウエイト)」が設置されています。

このバランスウエイトによって、それぞれピストンごとのクランクの回転が均一となり、エンジンがスムーズに回ることで、エネルギーのロスが少なくなり、その性能を十分に発揮することができます。

また、バランスウエイトは、製造時にそれぞれの重量バランスが測定され、エンジンの組み付け前に、バランスウエイトに穴を開けることで、質量の調整が行われます。

クランクジャーナル

ピストンの上下運動エネルギーによって回転する、クランクアームによって回され、回転エネルギーを生み出す「軸」が、クランクジャーナルです。

クランクジャーナルは、ピストンヘッドにおいて発生した、爆発エネルギーを常に受け止めながら、毎分数千回転という高速で回転し続けるため、大変な負担がかかっている部品です。そのため、クランクジャーナルは、それを受けるクランクケースとの間で強く摩擦されて、「焼き付き」を起こしやすい部品です。

焼き付きを起こさないために、クランクジャーナルには、クランクケースとの間に「メインベアリング」と呼ばれる軸受けが設けられています。

メインベアリングは「メタル」とも呼ばれる半月状の部品で、クランクジャーナルを上下から挟み込んで軸受となり、その隙間をオイルで満たすことで、クランクシャフトを円滑に回転させて焼き付きを防ぎます。

クランクシャフトは回転バランスが重要

クランクシャフトは、エンジンの爆発エネルギーによる負荷を常に受け止めながら、1分間に数千回転という高速で回転するため、円滑な回転を維持するために十分な強度や剛性、耐摩耗性などが要求され、それらの条件をクリアするために、クランクシャフトには炭素鋼やクロームモリブデン鋼などの特殊鋼や特殊鋳鉄などが素材として使われます。

また、クランクシャフトの回転時に、エンジンの爆発エネルギーによる負荷を直接受けながら摺動(しゅうどう:滑らせながら動くこと)する、クランクピンやクランクジャーナル部は、耐摩耗性を高めるために表面硬化処理(高周波焼き入れなど)が施されます。

さらに、回転バランスを確保するために、クランクアームにバランスウエイトが設置され、それぞれのクランクによる回転を均一化しています。

焼き付き防止にはオイルクリアランスの管理が重要

クランクシャフトの焼き付き防止のため、クランクピンとクランクジャーナルにベアリングが組み込まれています。

焼き付きを起こしやすいクランクジャーナルのメインベアリングは、内部がオイルで満たされ、さらにクランクジャーナルとメインベアリングとの隙間の「オイルクリアランス」を最小限に保つために、1000分の1ミリ単位で管理されています。

プーリー

クランクシャフトプーリーは、クランクシャフトの最前部に装着されている滑車(かっしゃ)のことで、クランクの力で回転し、エンジンの補機類(オルタネーター《発電機》、エアコンコンプレッサー、パワーステアリングポンプなど)を駆動する部品です。

クランクプーリーには、クランクシャフトが回転する際、大きな抵抗となる「ねじり振動」を和らげるため、衝撃吸収作用のあるゴム製の「トーションダンパー」が組み込まれ、クランクシャフトの、急激な回転変化によって発生するねじりを緩和します。

クランクシャフトべアリングの交換方法について

クランクシャフトベアリングの交換方法について説明します。

メインベアリングの交換時に重要なのが、「オイルクリアランス」です。オイルクリアランスが定められた最小限の数値でなければ、きちんとエンジンが回りません。クリアランスが広すぎると回転にガタを生じ、また、狭すぎるとクランクジャーナルの焼き付きを起こします。

また、最適なクリアランスを実現するには、それぞれのクランクに適合したメタル(ベアリング)に交換する必要があります。同じエンジンでも、それぞれクランクごとに適合した大きさのメタルが指定されており、バランスウエイト部に記入されている数値を見て、適切なメタルを購入します。

メタル嵌合をきちんと合わせるのが重要

さらに、シリンダーブロック側のベアリングキャップも、メタルと同じサイズを用意し、シリンダーブロック本体に組み込みます。このメタルとベアリングキャップとのかみ合わせを「メタル嵌合(かんごう)」といい、メインベアリングは、それぞれのクランクケースに適合するよう、数種類のサイズが用意されています。

メインベアリングの交換の仕方

①まずクランクケースを開けてクランクを取り出し、古いメタルとキャップを取り出します。

②次に、クランクケースにオイル溝が入った側のメタルを取り付けます。

③反対側のメタルをベアリングキャップに取り付けます。これでひとまず準備完了です。

④クランクシャフトをキレイに洗浄し、クランクケースブロックに乗せます。そして、クランクジャーナルのオイル孔と、メタルのオイル孔との位置を合わせ、オイルクリアランスを計測します。

⑤ベアリングキャップを上に乗せて、キャップと取り付けねじの接点にオイルを塗り、トルクレンチを使って締め付けます。

クランクシャフトとカムシャフト軸の方向について

カムシャフトとは、卵形のカムが複数連なった軸で、回転することでエンジンのバルブシステムを作動させます。

カムシャフトは、クランクシャフトからの動力を伝える「タイミングベルト」によって回転し、カムがバルブ装置のロッカーアームやタペットを押すことで、バルブが開閉し、エンジンの吸気および排気が行われます。

カムシャフトは、タイミングベルトまたはカムチェーンを通して、クランクシャフトの動力によって回転するため、カムシャフトとクランクシャフトの軸方向は同じです。

クランクシャフトの芯出しとは

クランクシャフトの芯出しとは、エンジンチューニングの王道とも呼ばれる手法の一つで、クランクシャフトの回転時の揺れを極限までゼロに近づけることで、エンジンの摩擦抵抗を減少させ、また、耐久性の向上などを目的としたチューンナップ技術です。

クランクシャフトを芯出しする方法は、まず、芯出しに必要な道具を準備します。

芯出しに必要な道具

①ねじれや曲りを計測する、ダイヤルゲージ(1000分の1単位の計測が可能な製品がです)

②ダイヤルゲージを固定する、マグネットスタンド

③検芯台(山田商会製の「芯出す臓」がです)

④銅製のハンマー

⑤厚めの皮手袋

クランクケースの芯出しの仕方

クランクシャフトを分解します。そして、クランクを一つずつ組みつけながら、検芯台にのせてクランクのねじれを計測し、ハンマーで修正を加えて芯出しを繰り返しながら、順に組み付けていきます。最終的にねじれが限りなくゼロに近づけば、芯出しが完了します。

クランクシャフトオイルシールの組み付け方法

クランクシャフトオイルシールの組み付け方法について説明します。

オイル漏れ

エンジンのオイル漏れが良く発生する場所として、「クランクケースオイルシール」があります。

オイルシールは、クランクケースから外へ突出した、クランクシャフトプーリーに接続されるクランクシャフトの先端部分と、クランクケースとの間を埋めるシールで、この部分が劣化すると、ケース内部のオイルがにじみ出てきます。

また、オイルシールは先端だけでなく、クランクシャフト後端部にも存在し、こちらもオイル漏れが発生します。

クランクシャフトオイルシールの交換方法

フロントのクランクシャフトオイルシールの交換は、まず補機ベルトや、タイミングベルトまたはカムチェーンを脱着し、クランクスプロケットやプーリーを取り外します。

次に、ピックアップツールなどを使用して、古いオイルシールを取り外します。その後、新しいオイルシールを装着し、塩化ビニール製のパイプを使用して、ハンマーで打ち込みます。

また、リアのオイルシールは、トランスミッションを脱着してから、同じ作業を行います。

クランクシャフトの修理について

焼き付きなどでクランクシャフトを破損してしまった場合は、修理が必要となります。修理作業はメインベアリングを交換することで行いますが、たいていは、クランクシャフトの曲がりや偏摩耗を発生しているため、研磨作業を行い、アンダーサイズのメタルを使用して、オイルクリアランスを測定し、クランクケースに組み付けます。

ちなみに、ディーラーに依頼すると、30万円くらいの修理見積もりが出され、エンジン交換をした方が安上がりになることが多いです。

クランクシャフトはレシプロエンジンの重要部品

クランクシャフトについて、その仕組みや構造、またベアリング交換や修理の方法などを紹介しました。

現在、ほぼ全ての車やオートバイには、ピストンの上下運動でエネルギーを生み出す「レシプロエンジン」が搭載され、それに欠かせない部品がクランクシャフトです。

クランクシャフトは、ピストンの上下運動を回転運動に変換し、車を走らせるための駆動力を生み出す重要な部品です。クランクシャフトには、ピストンからの爆発エネルギーが常に掛かっており、また、1分間に数千回転という高速で回転しているため、大きな負担がかかる部品です。

クランクシャフトはオイル管理などメンテナンスが重要で、焼き付きなどで破損すれば修理に大金が掛かるため、愛車を長持ちさせるために注意が必要な部品です。

あなたもクランクシャフトの仕組みを学んで日々のメンテナンスに励み、愛車のことをもっと好きになりましょう。

初回公開日:2018年04月15日

記載されている内容は2018年04月15日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

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