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デコンプの仕組みと構造・使い方・カッター・レバーの使い方

更新日:2023年12月20日

デコンプについて、その仕組みと構造、使い方、またカッターやデコンプレバーの使い方などを解説します。キックペダルでエンジンを掛ける際に、ペダルが足に跳ね返ってケガをする、とっても危険な「ケッチン」を解決するデコンプの耳寄りな情報を紹介します。

デコンプの仕組みと構造・使い方・カッター・レバーの使い方

デコンプの仕組みとは

自動車やオートバイなど、エンジンに搭載される装備のひとつに「デコンプ」があります。「デコンプ」は、エンジンを始動させる際に使用する装置のひとつで、デコンプを装備することで、エンジンの始動をスムーズに行うことができます。

しかし、デコンプは全てのエンジンに搭載されているわけではなく、むしろ、ごく限られたエンジンにのみ搭載されているので、エンジンにとって絶対に必要な装備というわけではありません。

このようなデコンプについて、その仕組みと構造、使い方、またデコンプカッターやレバーの使い方を解説していきます。

デコンプとは

デコンプとは、デ・コンプレッション機構の略で、エンジンのシリンダー内の圧力を抜く装置の事をいい、英語ではcompression release mechanism(圧力開放機構)といいます。

デコンプは、例えばオートバイなどに搭載される、爆発間隔が大きな単気筒エンジンを始動させる際に、内部の圧力を抜くことで、キックスターターを踏み込んだ時に、エンジンからの反発でキックレバーが足に跳ね返ってくる「ケッチン」の発生を防ぎ、エンジンの始動を容易にします。

エンジンの始動をスムーズにするための装備

キックスターターなど、人力によってエンジンを始動させる場合には、事前にキックペダルを軽く数回踏み、ピストンを上死点まで持っていきます。そうすることで、エンジン始動時にキックペダルを強く踏み込んだ際の、クランクシャフトの回転数が最大となります(4ストロークエンジンで2回転弱)。

つまり、始動時にキックペダルを強く踏み下ろす前に、あらかじめピストンを上死点の位置に持っていくことで、例えば4ストロークエンジンなら、エンジンの4行程である吸気、圧縮、膨張、排気(ピストンの位置が下死点・上死点・下死点・上死点の順)を、一回のキックで順番に行う事ができ、エンジンを始動させやすくなります。

デコンプでシリンダー内の圧力を逃がす

このエンジン始動の準備を行う場合に、シリンダー内には、エンジンによって吸い込まれた空気によって圧力が掛かっているため、キックペダルの動きを妨げて、ピストンが始動にちょうど良い位置を行き過ぎてしまい、エンジン始動前の作業を難しくさせています。

そこで、デコンプ機構によって、シリンダー内に残った空気を外へと開放し、圧力を逃がすことで、エンジン始動準備の作業を容易に行うことができます。

デコンプの仕組み

総排気量399ccの空冷4ストローク単気筒エンジンを搭載した、ヤマハのオートバイ、「SR400」に装備されているデコンプ装置は、エンジンを始動する際、手動式のデコンプレバーを引くことで、シリンダーヘッドの排気バルブが開いて中の空気を外へ開放し、シリンダー内の圧力が抜けてキックペダルの動きが軽くなり、始動準備が容易に行えるようになります。

デコンプレバーを引いて、キックペダルを数回踏み込むことで、ピストンを上死点の位置に合わせた後、デコンプレバーを離し、キックペダルを強く踏み込み、しっかりと下まで踏み下ろすことでエンジンが始動します。

チェーンソーや草刈り機のデコンプ装置

林業などに使われるチェーンソーや、草刈り機のエンジンでは、プーリーに巻きつけられたロープを手で引く、手動式のリコイルスターターによって始動を行います。これらのエンジンにもデコンプ装置が装備され、始動時の労力を軽減させています。

このデコンプ装置の仕組みは、電磁式の減圧機構と、機械式開閉バルブが装備されている物の二種類があり、最近では、いずれもスターターロープの位置を検知したり、ク開始によるシリンダーの圧力によって自動的に作動します。

小型汎用ディーゼルエンジン

耕耘機などに使われている、小型ディーゼルエンジンでは、手動でのエンジン始動を容易にするため、始動用のクランクハンドルを回すと自動的にデコンプ装置が作動する仕組みになっています。

手動による始動操作で、フライホイールが十分な回転を確保すると同時に、デコンプ機構が停止し、エンジンが始動します。

自動車用ガソリンエンジン

自動車用エンジンではセルモーターが装備されるため、始動を容易にするためにデコンプ装置が使われることはありません。しかし、現在の自動車用ガソリンエンジンでは、始動時に発生する振動を低減するために、デコンプ装置が使われることがあります。

それはハイブリッド車や、アイドリングストップ機能を搭載した車など、エンジンの始動と停止を頻繁に行う車に装備されています。

その仕組みは、パワーアップと低燃費が両立できるとして、現在、多くの車に搭載されている「可変バルブタイミングリフト機構」を利用して、吸気バルブの遅閉じを行うことで、デコンプ(圧力開放)を行います。

デコンプの使い方について

デコンプの使い方について説明します。

現在市販されている、キックスターターを装備したオートバイでは、始動時にキックペダルに連動して自動的にシリンダー内の圧力を開放する「オートデコンプ機構」が装備されており、キックを踏み下ろすだけでデコンプが働くため、特別な操作は必要ありません。

しかし、ヤマハSR400では、現在では非常に珍しく、手動式デコンプレバーが装備され、始動前にキックペダルと同時にレバーを操作し、始動準備を行います。

エンジンカッターのデコンプについて

エンジンカッターとは、コンクリートや石材、金属などを切断する、エンジンを搭載した切断用機械です。多くはガソリンとオイルの混合燃料が使われ、始動の際にはデコンプボタンを押してから、始動用リコイルスターターのロープを引きます。

エンジンカッターでは、まず、デコンプボタンを押してシリンダー内の圧力を抜き、次にスターターロープを引いて初爆(しょばく)を行うと、デコンプが解除されます。そして、再度スターターロープを引いて、エンジンを始動します。

初爆は、燃料に点火し、正常に爆発した事を示します。エンジンカッターなどの小型エンジンには燃料噴射装置がないため、初爆によってシリンダー内に適正な混合気を送り込むことで、エンジンを始動します。

デコンプワイヤーの使い方について

ヤマハSR400や、往年のクラシックオートバイなど、手動式デコンプ装置が装備されている車両では、シリンダーヘッドのデコンプ装置を作動させるために、デコンプ操作用のハンドルやレバーへとつながる「デコンプワイヤー」が使用されています。

このデコンプワイヤーが、経年劣化や錆などでスムーズに動作しない場合は、デコンプ機構による吸気バルブの開放がうまくできないため、新しいワイヤーに交換します。

デコンプレバーの使い方について

デコンプレバーによる、エンジンの始動の仕方について説明します。

日本のヤマハ製スポーツバイク、SR400は、現在では数少ない、キックスターターと手動式デコンプレバーによる始動方式を持つオートバイです。また、始動に最適なピストン位置を示す、キックインジケーターも装備されています。

ピストンの上死点を探る

キックペダルをゆっくりと踏み下ろしながら、ピストンの上死点位置を探ります。キックペダルを踏み下ろす足が次第に重くなり(抵抗が強くなる)、ピストンが上死点に近づいていきます。

上死点まで来たらキックペダルを元の位置に戻す

キックを踏む足が相当に重くなり、軽い力では踏みづらい所にまできたら(ここが上死点の位置になります)、キックペダルを元の位置に戻します。この時に、中途半端ではなく完全に元の位置にまで戻すのがポイントです。この時点では、シリンダーヘッドカバー右側にある「キックインジケーター」は、まだ黒いままです。

デコンプを操作しながらペダルを少しだけ踏む

ハンドルの左側、グリップの下にあるデコンプレバーを引き、そのままでキックペダルをほんの少しだけ踏み下ろして、ピストンの位置を上死点からわずかに下げます。この際に、踏み下ろす具合の目安は、「キックインジケーター」が完全に白くなるまでです。

キックペダルをしっかりと最後まで目一杯踏み下ろす

デコンプレバーを離し、再度キックペダルを完全に元に位置に戻してから、勢いよく、一気にキックペダルを踏み下ろします。この時、ペダルがストッパーに当る所まで、最後までしっかりと、目一杯踏み下ろしましょう。踏み下ろし方が甘いとエンジンが掛かりません。

軽快なサウンドと共にエンジンが目覚める

踏み込むのにそれほど脚力は要りません。最後までしっかりと踏み込むことが重要です。踏み込みがうまくいくと、空冷単気筒特有の軽快な音と共に、エンジンが始動します。

デコンプの構造とは

デコンプ機構の構造について説明します。

ヤマハSR400は、手動式デコンプレバーを操作することで、吸気バルブが開いてシリンダー内の圧力を開放することで、エンジンの始動を容易にします。

しかし、現在市販されている多くのオートバイでは、キックペダルに連動して吸気バルブが開放される、「オートデコンプ機構」が装備され、デコンプ機構自体の操作は不要となっています。

また、チェーンソーや草刈り機などの汎用エンジンにおいても、電磁式開放装置や、機械式開放弁が装備され、スターターロープの引き具合や、クランクの回転によるシリンダー内の圧力上昇などを検知して、自動的にデコンプが作動するようになっています。

デコンプはエンジン始動をスムーズに行う装置です

デコンプについて、その仕組みと構造、使い方、またデコンプカッターやレバーの使い方などを紹介しました。

自動車が誕生した黎明期(れいめいき)には、エンジンの始動は手動式クランクハンドルを使用して、人力でエンジンを始動させていました。この際、エンジン内の圧力によって鉄製のハンドル棒が跳ね返る「ケッチン」によって、手首を骨折してしまう「運転手骨折」が発生し、問題となっていました。それを防ぐために生まれたのが、デコンプ機構です。

デコンプ機構はシリンダー内の圧力を逃がして「ケッチン」を防ぎ、エンジンの始動を容易にします。このデコンプを装備した、現代では唯一のオートバイ、ヤマハSR400は、2017年を持って残念ながら生産終了しましたが、あの儀式とも呼べる作業の楽しさは、とても魅力的です。

オートバイが好きなあなたなら、ぜひデコンプとキックペダルを装備した、SR400をぜひ体験してみましょう。

初回公開日:2018年04月13日

記載されている内容は2018年04月13日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

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