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軽装甲機動車の払い下げの方法・陸上自衛隊のものの特徴

更新日:2024年04月01日

軽装甲機動車について、その成り立ちや魅力、払下げなどの購入方法、価格、レプリカなどを解説します。陸上自衛隊では普通科部隊に配備され、イラク派遣や震災支援で活躍するなど、小松製作所が開発したミリタリー愛好家に大の車両、軽装甲機動車の耳寄りな情報を紹介します。

軽装甲機動車の払い下げの方法・陸上自衛隊のものの特徴

軽装甲機動車の払い下げの方法について

車が好きな人の中には、趣味の車に対して特別にマニアックな趣向を持つ人たちが存在しています。

そういったエンスージャスト(好事家:こうずか)の多くが、エキゾティックなスーパースポーツやレーシングカー、希少性の高いクラシックカーなどに興味を持ちますが、そのような一般的な自動車趣味とは異なり、戦車や装甲車といった、軍隊や自衛隊が運用する車両に強く惹かれるという人たちがいます。

自衛隊も運用する今話題の軽装甲機動車

そのようなミリタリー派のエンスージャストの間では、最近「軽装甲機動車(けいそうこうきどうしゃ)」という軍用車両が話題となっています。

軽装甲機動車は日本の陸上自衛隊を始め、航空自衛隊でも運用を行っている車両として、防衛庁が協賛する各種イベントなどに出品され、ミリタリーファンのみならず、一般の人たちや多くの子供たちにも、とてもがある車です。

このような軽装甲機動車について、その成り立ちや魅力、払下げなど購入方法、また、気になる価格やレプリカなどホビーアイテムについて解説していきます。

軽装甲機動車とはどんな車?

軽装甲機動車とは軍用装甲車の一種で、戦闘を目的とした装甲戦闘車両のうち、装輪装甲車(そうりんそうこうしゃ)に分類される車です。

軽装甲機動車はタイヤで走行する装輪装甲車

装輪装甲車とは、ゴム製のタイヤを装着した車輪によって走行する車で、車体や窓ガラスに防弾装甲を持ち、天井にあるハッチから乗員が外に身を乗り出し、機関銃や対戦車誘導弾などを使用して戦闘を行う、歩兵部隊の防御力と移動力を向上させるための車です。

装甲車は、装輪装甲車と装軌装甲車(そうきそうこうしゃ)に分類され、装軌装甲車とは、無限軌道(キャタピラー)によって走行する装甲車の事です。

冷戦終結によって装軌車から装輪装甲車の時代へ

1989年の「ベルリンの壁崩壊」から、東西冷戦が終結したのを皮切りに、それまで対立していた両陣営諸国の間で軍事費の支出が抑制されました。

それによって各国の軍隊で運用されている、軍用機体の配備体制が大きく転換されることとなり、それまで主流だった装軌装甲車から、調達費用や維持費が格段に安く、また技術革新によってエンジンやサスペンション、タイヤといった走行装置の性能が向上し、悪路での走破性が高まった装輪装甲車が好まれ、急速に配備されるようになります。

舗装路では時速110㎞/h以上で走行可能

軽装甲機動車を始めとする装輪装甲車の特徴は、タイヤ付きの車輪によって走行するため、舗装された道路を高速で自走することが可能なことです。しかも長距離を移動できるため、有事や災害時の派遣などには迅速に対応ができます。

また軽装甲機動車は無限軌道(キャタピラー)車とは違って、舗装路では少ないエネルギー消費で安定した高速走行を行うことができ、最高速度は110㎞/h以上にまで達します。同時に燃料消費量が少なく航続距離が長いため、物資の補給など戦闘支援を行う兵站(へいたん)の負担を軽減します。

悪路走破性ではキャタピラー車に劣る

しかし軽装甲機動車みたいな装輪装甲車は、舗装路での走行性能が優れている分、不整地(悪路)での走破性や、塹壕や堤防を越える能力、登坂能力といった「路外走行性能」では、無限軌道(キャタピラー)を備えた装軌装甲車と比べてはるかに劣ります。

車体を軽量にする必要があるため装甲が薄い

軽装甲機動車は、ゴム製のタイヤが付いた車輪で走行し、キャタピラーを装備する装軌装甲車と違って路面との接地面積が狭く、タイヤが地面に深く沈むとすぐにスタック(地面に嵌ること)してしまい、走行不能になります。

それを防ぐために、軽装甲機動車では、不整地でタイヤが地面に深くのめり込まないように、車両重量を軽くする必要があることから、必然的に装甲の厚みに制約ができ、戦車などに比べて装甲が薄くなります。

また、装甲が薄い軽装甲機動車では、機銃に対する防弾能力以外、ミサイルや徹甲弾といった高エネルギー弾に対しての防御能力はほとんどありません。

軽量で製造コストが低くヘリなどで輸送が可能

軽装甲機動車などの装輪装甲車は、車体が軽量のため、重量級の装軌装甲車みたいな、大型で高出力のエンジンを必要とせず、このため兵器としては比較的安価に製造することができます。

また軽量で小型の車体を生かして、軽装甲機動車を、CH-47「チヌーク」輸送ヘリコプターなどにて空輸し、空中投下することが可能です。

各国の軽装甲機動車(装輪装甲車)

日本の自衛隊を始め、各国の軍隊で運用されている装輪装甲車について説明します。

軽装甲機動車LAV(日本)

2000年11月に部隊使用承認を受けた日本製装輪装甲車で、名前を「Light Armored Vehicle(軽装甲機動車)」と名付けられ、2002年より陸上自衛隊にて部隊配備が開始された装甲車です。また2003年には航空自衛隊が調達を開始しています。

軽装甲機動車(Light Armored Vehicle)は、その頭文字をとって「LAV(ラヴ)」という略称で呼ばれています。

イヴェコLMV(イタリア)

イヴェコはイタリアの商用車メーカーとして世界中に工場を持つ製造会社で、日本にも東京消防庁などが納入している消防車(はしご車)が有名です。

イヴェコ社が開発したLMV(Light Multirole Vehicle)は、戦闘目的で開発された軽装甲車で、Multirole(マルチロール:多用途)の名のとおり、戦闘以外に軍用救急車や通信車などにも使用することができる万能車両です。

イヴェコLMVは全長5.5m、幅2.05m、高さ1.95mと小型で、輸送ヘリコプターにも搭載できるなど運用がしやすく、またターボチャージャー付きエンジンを搭載し、最高速度は130㎞/hに達します。さらにパンクしても走行可能なランフラットタイヤが装備されています。

LMVはイタリア軍の他、9ヶ国で運用されています。2010年にはロシア軍が1台30万ユーロ(3,300万円)で購入しました。

VBL装甲車(フランス)

VBL(Véhicule Blindé Léger)は、フランスの軍用車両製造メーカーで、かつては乗用車でも有名だったパナール社が開発した軽装輪装甲車です。

過去にはイギリスと同じで多くの植民地を所有していたフランスは、それらの国々が独立した後も影響下にある関係から、フランス軍では小型で機動性に優れ、海外などへの部隊派遣がしやすい軽装輪装甲車の開発に積極的で、その中で最も小型の車がVBLです。

VBLは1985年に採用され、動力装置を前部に置き、車両全体をコンパクトに収めた装甲ジープ的な形状の軽装甲車で、プジョー製の水冷直列4気筒ターボディーゼルを搭載し、最高速度は95㎞/hに達します。

VBLはその大きさや形状が、日本のLAVと似ているとの指摘がありますが、関連性はないといいます。

ハンヴィー(アメリカ)

ハンヴィーは、アメリカ軍で1985年に運用が開始された、従来のM151(ケネディジープ)に代わる軽装輪装甲車です。

開発したのはAMゼネラル社(旧アメリカンモータースの軍用車部門)で、ハンヴィーとは「HMMWY:High Mobility Multipurpose Wheeled Vehicle(高機動多用途装輪車両)」の愛称です。

ハンヴィーは特定の車種の名称ではなく、M998四輪駆動軽汎用車とその派生型を示す言葉で、対空型、対戦車ミサイル搭載型、兵員輸送型、野戦救急車型といった各部隊ごとに特別な改造が施された、多くの種類が存在します。

ハンヴィー初の実戦投入は、1989年に発生したアメリカ軍によるパナマへの軍事侵攻で、その後、米軍の戦闘軽装甲車として高い知名度を誇ります。エンジンは総排気量6200ccのV型8気筒ディーゼルで、190馬力を発揮し、最高速度は125㎞/hに達します。

軽装甲機動車を払下げする方法は?

日本の防衛庁では、陸・海・空、全ての自衛隊において運用されている機体について、民間への払下げによる売却などは行っていません。ですので陸上自衛隊および航空自衛隊で使われている軽装甲機動車(LAV)を、一般の人が購入することはできません。

しかし、海外においては異なり、戦車や装甲車を始め、軍用機や潜水艦などあらゆる機体が使用後に民間へと払い下げられ、売却されています。

あの有名なイタリアのスポーツカーメーカー、ランボルギーニ社の創始者フェルッチオ・ランボルギーニが、第二次大戦後にイタリア軍から大量に払い下げられた軍用車をベースにした、農業用トラクターを販売して大儲けしたのは有名な話です。

払い下げ軽装甲機動車ならハンヴィーが

軽装甲車の払下げ車両として有名なのが、やはり米軍のハンヴィーでしょう。現地アメリカでは払い下げ軍用車専門の業者が多数存在し、一般のユーザーに向けて販売を行っています。中にはほとんど走行していない、新車同然に状態の良い車も存在しているといいますから、ミリタリーファンなら誰もが興味津々でしょう。

また、こうした米軍払い下げのハンヴィーは、数はそれほど多くはありませんが、日本にも輸入されています。それらは輸入車専門店によって一般向けに販売され、購入者は車検をパスした車を一般公道で走らせて楽しむことができます。日本でもハンヴィーは大変なで、入庫したそばからすぐに売れてしまうといいます。

ハンヴィーの日本での販売価格は?

気になる価格ですが、ハンヴィーを買うにはまず、アメリカ国防兵站局(DLA)のオークションに参加し、希望の車両を落札します。最近のハンヴィーの競売開始価格は7,500ドル程となっており、多くの車両が40,000ドル程度で落札されるといいます。

40,000ドルを日本円で仮に400万円として計算しますと、落札した車を日本へと運び、それを日本の法令に適合するよう改良やメンテナンスを行うとして、そのための費用が総額およそ190万円くらい必要でしょう。そうなると、ハンヴィーの日本での販売価格は約600万円となります。

日本で軽装甲車を乗り回してみたいと考えるミリタリーファンは、ぜひ一度問い合わせてみましょう。また、武装された車両は本国でも購入できませんので注意しましょう。

陸上自衛隊の軽装甲機動車の特徴

陸上自衛隊が運用する軽装甲機動車は、大手重機製造メーカーの小松製作所が開発し、製造しています。小松製作所は過去にも、多くの陸上自衛隊が運用する装甲車を開発してきたメーカーとして知られています。

陸上自衛隊の軽装甲機動車は、2001年にまず102両が調達され、翌2002年には149両の調達が決定し、同年に部隊配備が開始されました。軽装甲機動車は、現在まで陸上自衛隊に1,818両、また航空自衛隊からも119両、合わせて1,937両が調達されています。

ゲリラや特殊部隊に対応して乗車定員は4名

陸上自衛隊では、軽装甲機動車を普通科部隊(以前の歩兵部隊)に配備し、防御力と移動力の強化を行っています。

軽装甲機動車の乗車定員は4名で、これは従来みたいに7~8名の分隊全員が一つの車両に乗って行動するより、3~4名ずつ分けて乗車し行動する方がより機動力が高まり、対テロリストなどゲリラや特殊部隊との戦闘に有効なためです。

いすゞ製ターボディーゼルエンジンを搭載

軽装甲機動車は、日本のいすゞ製、水冷4気筒ターボディーゼル、総排気量4800ccエンジンを車体前部に搭載し、これに二段の副変速機付き4速AT(オートマティックトランスミッション:自動変速機)を組み合わせて、最高出力は160馬力、最高時速は時速100㎞/hとなっています。

また海外の軽装輪装甲車と同じ、四輪独立懸架のサスペンションを装備し、前ダブルウィッシュボーン、後セミトレーリングアームとなっています。タイヤはパンクしても走行可能な、ブリジストン製のランフラットタイヤが採用されています。さらに室内にはエアコンディショナーが装備されています。

イラクなど海外派遣や震災支援で活躍

陸上自衛隊の軽装甲機動車は、その小型軽量と機動性の高さから、イラクやハイチなど海外派遣での任務遂行において、非常に過酷な環境下でその性能を十分に発揮し、また2011年の東日本大震災では、舗装路での高い走行性能を生かして活躍を見せ、メディアなどから多くの人に知られることとなりました。

タミヤのRC軽装甲機動車

TAMIYAブランドでホビーファンにはおなじみの、田宮模型から電動ラジオコントロールカーの「RC陸上自衛隊軽装甲機動車」が販売されています。

こちらは1/10スケールの電動ラジオコントロール車で、実車さながらの四輪駆動システムを搭載しています。四駆ならではの軽快なオフロード走行が楽しめるとあって、ミリタリーファンならずとも、多くのラジコン愛好家にのモデルです。

価格は1万7,064円となっています。また本体とは別にタミヤのエクスペックプロポ(操縦装置)、バッテリーパックの購入が必要となります。

1/35スケールモデル

田宮模型では、1/35スケールモデルのミリタリーコレクションとして、「陸上自衛隊・軽装甲機動車・イラク派遣仕様」を販売しています。

こちらは同社が誇るシリーズとして、世界中の多くのモデラーに愛される、タミヤ製の軍用車ディスプレイモデルで、プラスティックモデルの組み立てキットです。キットの大きさは全長12.8㎝で、ケースなどに飾るのにちょうどよいサイズです。

この組み立てキットでは、実車の直線基調の車体デザインをリアルに再現しており、平面で構成された独特のスタイリングを表情豊かにミニチュア化しています。キット車両の土台となるシャシーにダイキャストパーツを使い、本物の持つ重量感を演出しています。

キットにはイラク派遣車の特徴である日章旗デカールや、実際の装備などをリアル再現した、操縦席に座る自衛隊員が付属するなど雰囲気が高まります。価格は3,672円です。

軽装甲機動車の価格について

小松製作所が生産する軽装甲機動車の調達価格は、一両当たり3,000万円で、これは民生用部品の活用などによって630万円程度のコストダウンが実現した事によります。

同じ小松製作所が製造した、陸上自衛隊の96式装輪装甲車の調達価格が約1億円なのに比べると、軽装甲機動車は相当安価です。

軽装甲機動車の評価は

陸上自衛隊が運用している軽装甲機動車に対する評価は、実際に使用した自衛隊員によると、従来使われていた1/2トントラック(通称ジープ)に比べて、車体が大きくて重い、フロントの防弾ガラスが2分割されているため視界が悪い、といった操縦性に対する不満の声が上っているといいます。

その他にも、エンジンやタイヤからの騒音が大きい、座席の質が悪く長距離の移動では以前よりも疲労が大きい、特異なデザインで非常に目立つために、コンビニなどに立ち寄るのが少し恥ずかしい、といった快適性や使い勝手の悪さも指摘されています。

しかしエアコンの効きはジープよりもよいとされ、過酷な環境のイラクやハイチなどでの任務では、隊員に好まれたといいます。

軽装甲機動車の購入方法について

軽装甲機動車を始め、日本の防衛庁では海外とは異なり、自衛隊の運用機体については、払下げによる民間などへの販売は行っていないため、一般の人が購入することはできず、使用後は全てスクラップにされるといいます。

熱心なミニタリーマニアにはもったいないと感じる話ですが、日本の自衛隊の性質上、このような体制が変わるとは考えにくいでしょう。

しかし、日本の軽装甲機動車は無理でも、米軍のハンヴィーなら専門の販売店に依頼すれば、ネットオークションで払下げ車両を落札し、購入することができます。埼玉県越谷市にある輸入車販売店「スカイオート」では、ハンヴィーを始め、その民生仕様「ハマーH1」などの販売を行っています。

軽装甲機動車のレプリカについて

ミリタリー派のホビーファンや、軍用車好きの子供たちにはうれしい、軽装甲機動車のレプリカについて説明します。

トミカ

トミカは日本の老舗玩具メーカー、タカラ・トミーが販売している、あまりにも有名なミニチュアカー・コレクションです。

今ではすっかり中高年のおじさんとなった人や、若いお父さんたちの中にも、子供の頃トミカで遊んだ経験のある人がたくさんいます。

バリエーションが豊富なトミカの軽装甲機動車

トミカは1/66スケールの軽装甲機動車を販売しており、その魅力はバリエーションが豊富なところです。通常の陸上自衛隊運用タイプに加え、日章旗の付いたイラク派遣仕様、イベントモデルとして萌木色の迷彩色の「札幌プラレール博展示車両」、大阪トミカ博に出品されたブルー迷彩仕様といった多くの種類があります。

希少なモデルは高値で取引されることも

トミカ軽装甲機動車シリーズにはその他にも、ハイパーレスキューコレクション、ハイパーブルーポリスコレクション、ハイパーグリーンレンジャーコレクションなど多種多様で、大人も子供も楽しませてくれる、魅力いっぱいのトミカワールドを展開しています。

トミカ軽装甲機動車の価格は450円ですが、希少なイベントモデルなどの商品は、何と1,800円という高値で売られていることもあります。

マニアなら一度は乗ってみたい軽装甲機動車

軽装甲機動車について、その成り立ちや魅力、払下げなどの購入方法や価格、またレプリカといったホビーアイテムなどを紹介しました。

軽装甲機動車は、各国の軍隊などで運用されている、装輪装甲車というタイヤを装着した車輪によって走行する車の事で、舗装路での走行性能に優れる機動性の高さが魅力です。しかし、キャタピラーで走行する装軌装甲車に比べて不整地での走破性は格段に劣ります。

陸上自衛隊では普通科部隊に配備される軽装甲機動車は、ミリタリーファンにの高い車ですが、払下げなどの販売は行っておらず、実車を手に入れることはできません。ですが各地で行われているイベントなどに出品され、運転席に座ったり、隊員の方に車両について話を聞くことができます。

ミリタリーファンならぜひ、あなたもそのようなイベントに参加して、素敵な軽装甲機動車の姿を実際に見てみましょう。

初回公開日:2018年03月29日

記載されている内容は2018年03月29日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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